脳神経科学

いま、脳神経科学は驚くべき進歩をたどっている。
ヒトの心を分析的に扱う学問として、20世紀前半には、心理学および精神分析学というものがあった。しかし、その記述はレトリック任せの要素が色濃く、現代ではあまり流行らない。
その後、20世紀終わりに、大脳生理学、神経生物学が大いに発展を遂げた。例を挙げるならば、神経伝達物質および受容体の発見による情報伝達のしくみの解明、シナプス機構に関する学習・記憶の研究、fMRIなどの測定機器ををもちいた脳高次機能の研究、などがある。
そして、21世紀はじめ、神経工学のなかから、ブレインマシンインターフェース(BMI)をはじめとする、いわゆるサイボーグ技術が登場した。
この技術は、簡単に言えば、扱う脳領域を運動と感覚をつかさどる部位に絞り、あとは高次の(複雑な)脳機能に任せてしまおうというものである。そのうえ、神経細胞から電気信号を受け取りさえすればスイッチの切り替えが可能となるので、あとは機械工学および情報技術の恩恵を授かるのみである。まさに、発想の転換、一石二鳥である。これまでに得た知見をつかって、新しいものを作ってしまおうとする視点がエキサイティングである。