CyborgはCybernetic Organismのこと
ちょうどサイボーグ技術に関する議論がふたたび高まってきたところであるので、立花ゼミ広報+(プラス)でもぜひ取り上げていきたい。
昨日の番組の中で、押井守監督は立花隆にこのように質問を投げかけた。
「もしサイボーグになることが可能だとして、立花さんはサイボーグになりたいと思いますか。」
それに対しての立花隆の返事は、こうであった。
「それはサイボーグの定義に依りますね。」
それに加えて、神経接続などを用いて、言葉にならない感覚を獲得することができるのなら、積極的に実験に参加したい、と言った。
そのやり取りを見て、サイボーグの定義が気がかりになったので、調べてみることにした。
Wikipediaによれば、Cyborgとは、"Cybernetic Organism"の略なのだそうだ。日本語にむりやり直せば、「人工頭脳的な有機体」となる。概念として最初に提唱されたのは1960年。いまから46年前である。では、Cyberneticとはなにか。これは、1947年ころに数学者のウィーナーらによって生み出されたサイバネティクス(Cybernetics)のことである。サイバネティクスは、工学の一分野として、通信・制御系で重要な役割を果たしている。それにくわえて、Organismという言葉があるが、これはSystemと捉えたほうがより現代的といえる。つまり、Cyborgとは元来、「人工の装置をうめこみ、生命体独自のシステムと調和させた、外延的かつ改良的システム」であるということができる。したがって、身体的障害の克服だけに限らず、身体機能の増強に関する期待がサイボーグ技術に寄せられるのは、当たり前のことなのではないだろうか。
番組でも言われたことだが、「生命体独自のシステムと調和させた」とはいうものの、実際のところは、機械がそのように完全にデザインされているのではない。むしろ、「生命体独自のシステム」に調節が生じ、機械との共存が実現されているというべきである。脳に電極が挿入されたサルは、もはや、これまで地上に存在したどんなサルとも根本的に違ってしまっているのである。つまり、サイボーグ技術は常に、生命体のもつシステムと向き合っているのである。
(あすへつづく・もくじ)
- 人類の進化に直結したサイボーグ技術
- 脳神経科学と脳そのものが生む事柄